近年育児に関するさまざまな課題が表面化しています。
男性も積極的に育児に関わることができるように“男性の育休制度”の厚生労働省主導による見直しや、何らかの理由があって一人で仕事、家事、育児の全てをこなさなければならない状態にある“ワンオペ育児”などがあります。
さまざまな課題が表面化する中で、皆さんはアウェイ育児という言葉を聞いたことはありますか?
アウェイ育児とは、慣れ親しんだ土地から離れたところで子育てをすることで、近所に親戚や親しい友人もおらず、不慣れな環境により孤独感や不安感を覚えることを言います。
このようなシチュエーションは昔からあるように感じますが、なぜ今アウェイ育児という言葉が生まれ、注目されているのでしょうか。
そこで今回は、20代~60代の子育て経験のある女性を対象に、「アウェイ育児」に関する意識調査を実施しました。
1.アウェイ育児の経験率と認知度について
2.アウェイ育児を経験して感じたことについて
3.アウェイ育児への理解と協力について
4.総括
まず、「アウェイ育児(慣れ親しんだ土地から離れ、親戚や親しい友人のいない環境での子育て)をした経験はありますか?」と質問したところ、4割以上の方が「はい」(44.1%)と回答しました。
年代別のデータを比較してみると、比較的若い年代の方がアウェイ育児を経験していることがわかります。
また、アウェイ育児という言葉はどれくらい浸透しているのでしょうか。
「アウェイ育児という言葉を聞いたことがある、または知っていますか?」と質問したところ、8割近くの方が「いいえ」(78.0%)と回答しました。
アウェイ育児という言葉を多くの方は知らないと回答しましたが、本人の自覚なしにアウェイ育児を行ってきた女性は思いのほか多いことがわかります。
次に、「アウェイ育児について当てはまるものを教えてください」と質問したところ、「たまにつらかった」(56.0%)という回答が最も多く、次いで「毎日つらかった」(25.3%)、「楽しいことが多かった」(15.1%)、「毎日が楽しかった」(3.6%)と続き、8割近くの方がつらいことの方が多かったと回答しました。
多くの方がさまざまな苦労をされているようですが、ここで気になるのは「楽しいことが多かった」、「毎日が楽しかった」という項目です。
年代別に調査したところ、50代~60代の方は、20代~40代の方に比べて楽しいことの方が多いという割合が増加していることが分かりました。
昔の方がご近所付き合いは盛んであったり、地域コミュニティ全体で見守り合う育児が機能していたりと、当時の時代背景がこのような結果になったと予想されます。
現代ではインターネットやSNSなどの発達により、欲しい情報が瞬時に手に入る環境や、オンライン上での交流が可能になった一方で、本質的な人との関わりが希薄になったことがアウェイ育児の問題を表面化させた要因の一つになったのではないでしょうか。
また、50代~60代の方に「「アウェイ育児は楽しいことが多かった」と答えた理由を教えてください」と質問したところ、
<図3>このような意見が挙げられました。
地域コミュニティのつながりと、夫の協力が得られる環境が毎日を楽しく過ごす秘訣ということなのでしょう。
アウェイ育児であっても毎日を楽しく過ごしてきた女性は、地域コミュニティや夫など、多くの協力を得て乗り越えてきたことが分かりました。
自分一人ではこの困難を乗り越えることはなかなか難しく、周囲の理解と協力が不可欠です。
そこで、「アウェイ育児について、理解や協力を得たいと思う項目を教えてください」と質問したところ、7割近くの方が「夫」(69.4%)という回答をされ、以下項目はほとんど差が無い結果になりました。
また、「具体的に夫に対して、どのような理解や協力を得たいと思いますか」と質問したところ、
<図5>上記内容が挙げられました。
慣れ親しんだ土地から離れ、親戚や親しい友人のいない環境での子育ては孤独を感じるものです。
子育てに最も近いパートナーが積極的に育児に参加し、普段の頑張りを認め合える関係性がアウェイ育児による孤独を和らげてくれるのでしょう。
慣れ親しんだ土地から離れ、親戚や親しい友人のいない環境で子育てをするという、いわゆるアウェイ育児は昔からありました。
それが現代では社会問題として表面化しています。
そこにはさまざまな背景が考えられますが、そうした問題を解決するためには「パートナーの育児への積極的な参加」と「地域コミュニティの協力」が不可欠ということが今回の調査で分かりました。
しかし現代においては、他者との関係が希薄になったことで地域コミュニティが機能していないということが実際に起こりつつあります。
他者となかなかコミュニケーションがとりづらいということもあるでしょうが、最も大事なことは育児をする方にとってはアウェイでも、子どもにとってはそこがホームになるということです。
地域コミュニティに積極的に溶け込むことで、育児の負担を軽減するためのさまざまな協力を得ると同時に、子どもにとっても住みやすい居場所になるのです。
土地勘もなく、パートナーの他に頼れる存在がいない環境はとてもつらいことです。
しかし、子どもを最優先に考えたとき、協力してやらなければならないことを夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。
そうすることがアウェイ育児による孤独感解消の第一歩かもしれません。
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